
[5]考察とまとめ
(1)本県運動部指導者における『中学生の競技力』の認識今回の意識調査の結果から、その割合に若干の差異はあるものの、地域を問わず、ほぼ県内レベルで『中学生の競技力』の認識に共通傾向があることが把握できた。それは、前述の「運動特性に触れ、将来にわたってスポーツを楽しむことができるようになる」という生涯スポーツの観点からの認識、心身の発達段階にある中学生の「基礎体力を養う」という、運動本来の持つ体力向上・健康増進の面、そして、それらの中で自ずと養われていく、「礼儀・協調性・強い意志」といった精神面の発達に集約された。 これらは、学校体育の目的と一致することを考えると、中体連活動が学校教育活動の一環と位置付けられ、中学生の教育の場として機能していることがうかがえる。 意識調査実施前、研究部では、「技術・技能を高め、試合で好結果を納める」ことが、生涯スポーツの認識と同様にかなりの高い割合を占めることを予想した。しかしながら、今回の調査ではそれ程の割合とはなっていない。このような調査ではともすると、少数の項目はふさわしくないものと意識される。極論するならば、「代表選手として活躍すること」などは、そのこと自体中学生の競技力向上には結びつかない事柄かという疑問が残る。この結果は、意識調査実施時期が、新チーム発足間もない9月であったこと、設問が記述でなく、選択肢方式であったことなどが少なからず影響していることも考慮しておかなければならない。県総体直前の7月、あるいは、各大会閉会式後の競技会場等の異なった条件や、場面では認識に変化が現われるのかどうか、選択数を増やすとどう変化するのかについて、認識の不変性や流動性についても実態把握が必要であると思われる。 また、本調査は、本県中体連登録の外部指導者のも同時期実施した。解答数が少数で今回の検討対象とはならなかったが、教職員指導者と外部指導者の認識の比較が不可欠である。 (2)指導者の専門性の問題ほぼ県内レベルで、『中学生の競技力』の認識に共通傾向が見られたことは前述したが、若干の差異の部分を考察したい。表(9・l1)のように、性別や役員と一般指導者等の項目ごとに比較すると、各項目の割合の比率にはやはり差が見られるむろん男女差や年齢差、または立場の違いもあろうが、むしろその多くは、指導者の専門性によるところが多分に影響しているように思われる。7割以上が専門外の指導者であるがために、女性指導者に専門外指導者の認識の傾向が顕著に現われていると解釈される。 (3)今後の課題と競技力向上対策運動部指導者が考え、望んでいることを、中学校現場の声としてまとめてみたい。 ・工夫と対策…○キャプテンを中心として、計画表にそった練習メニューを消化できるような生徒の自主性を育てたい。 ○生徒が楽しめる部活動にするために、できるだけ練習につく。 ・講習会…○専門外の人が部活動をもつことが多くなったので、地域ごとに講習会を聞く。○部活動顧問同士の情報交換が必要。 ・合宿、練習会…○郡市単位で合同練習会をする。 ○ 合宿をして競技者の意識を高める。 ○月例練習会の確立(指導技術の学習、指導者相互の人間関係づくり) ○新人選手育成のために、長期休業中に合宿を行なう。 ・ジュニア育成…○競技団体主催のジュニア合宿等の側面的支援。 ○中学校、高等学校と一貫したジュニア指導。 ・社会体育…○学校体育では限界があるので、社会体育へ移行を考えてほしい。 ○社会体育へ完全に移行し、こども達が本当にやりたいことをやらしてあげる。 ・その他…○指導者が活動に専念できるように、経済的・施設面で援助してほしい。 ○施設・設備の充実をお願いしたい。 (4)まとめに 6割の指導者は専門外の競技を、女性に至っては8割近くの教職員が学校事情で仕方なく運動部の指導を担当しているのが本県の実態である。しかも、最近10年間でその数字は増加傾向にある。もちろん、条件整備・指導者講習会等の具体的対策が急務であるが、競技力向上対策を語る時、そこには常に専門外の指導者を視野にいれた取り組みが必要である。
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